労働契約には無期労働契約と有期労働契約があります(下表参照)。
ここでは話を有期労働契約にしぼり、有期の労働者が通算5年を超えて反復更新して雇入れられた場合に発生する無期転換申込権(無期の労働者になることができる権利)について解説します。
まず、労働契約の締結時には、必ず契約期間の有無を明示するとともに、契約期間がある場合(有期労働契約の場合)には、更新の有無と更新基準を明示することが義務づけられています。
そして、更新がある場合も、労働者を不当に長期に拘束しないようにするため、1回の契約期間を原則3年以内にする必要があります(下表参照)。
ただし、これはあくまで1回の契約期間の話ですから、更新を繰り返せば、3年を超えて雇用することもできます。
このように更新を繰り返して、雇用期間が通算して5年を超えた場合に発生する無期転換申込権について、次の項で詳しく見ていきます。
契約期間 |
具体例 |
留意点 |
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期間の定めなし |
正社員、無期契約社員(パート等を含む) |
労働者側に解約の自由あり。 解雇する場合には、30日前以上前に予告義務あり。 労働者が退職するときは、2週間前までに申し出る。 |
契約期間 |
具体例 |
留意点 | |
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原則 |
上限3年 |
契約社員、アルバイト、パートタイマー、嘱託、季節労働者等 |
もし、契約期間の途中で解約すれば、損害賠償請求もありうる。 ただし、特例に定めるものを除き、契約期間が1年を超える労働者は、労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。 |
特例 |
上限5年 |
専門的な知識、技術又は経験(以下、「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約。 |
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上限5年 |
満60歳以上の労働者(高齢者)との間に締結される労働契約。 |
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一定の事業の完了に必要な期間 |
有期の建設工事等 (例) 6年、7年等、原則3年又は特例5年を超える期間で終了予定の建設工事等で、技術者等をその期間雇い入れる場合等。 |
契約更新により5年超の長期にわたり雇用される期待を持った労働者を保護するため、労働契約法は、第18条第1項で無期転換申込権を次のように定めています。
労働契約法 第18条第1項
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
つまり、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換することになります。
(無期転換申込権の発生要件)
有期労働契約であること。
同一使用者との労働契約であること。
2以上の契約があること(更新等により)。
通算契約期間が5年を超えていること。
使用者と労働者との間に無期労働契約が成立します。
この場合、使用者に拒否権はなく、労働者が申込みをすれば、当然に無期労働契約が成立します。
また、労働条件は、(契約期間を除き)従来と同一の労働条件で足ります。ただし、別段の定めをすることもできます。
空白期間が6ヶ月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算期間に算入されません。これを「クーリング」といい、労働契約法第18条第2項は、次のように定めています。
労働契約法 第18条第2項
当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。
このクーリング期間により、6ヶ月以上の期間にわたり有期労働契約が途切れれば、労働者にはもはや継続的に雇用される期待はないものとして、無期転換申込権が発生しなくなります。
例えば、出産をはさんでパートで雇用されるような方は、6ヶ月以上労働契約に間が空くと、延べ5年以上にわたり同じ会社で働いていたとしても、無期転換申込が発生しない扱いとなります。