従来、既に存在する会社と同一の商号を名乗る会社を設立することはできなかったため、会社を設立する際には、同一商号調査を行うことが必須でした。
しかし、登記法の改正により規制が緩和され、会社の①本店所在地と②商号の両方が同一でない限りは、会社を設立することができるようになりました。
このことを理由に会社設立時の商号調査を省略する代行業者もいるようです。
ところが、たとえ規制が緩和されてとしても、近隣に似たような業態の似たような名称の会社があれば、取引上の混乱を来すことに間違いはありません。
また、法改正後も、不正の目的をもって他人の事業と誤認混同のおそれがある事業を行った場合、商号の使用を差止められたり損害賠償の請求を受ける恐れがあります。
すなわち、①他の会社や他の商人であると誤認されるおそれのある名称や商号を使用しており、②その名称・商号の使用が不正の目的をもって行われており、
③その使用によって他の会社や他の商人の営業上の利益を侵害し、または、侵害するおそれがあるという3つの要件を全て充たすと判断された場合には、商号の使用を差止められたり、損害賠償請求を受けるおそれがあります。
また、①の注意点として、(ア)他の商人の商号は、登記されている必要はなく、また、(イ)名称または商号の使用が他の会社・他の商人の営業所所在地と同一市町村内で行われていること等は不要です。
さらに、②の「不正の目的」とは、当該商号によって表示される他の会社・他の商人の営業と誤認させようとする意図をいい、営業の同一性があることや、不正使用者に商人性があることを必要としません。
また、不正競争防止法第4条では、「故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」と規定しており、損害賠償請求を受けるおそれもあります。
このように見てくると、綿密な商号調査を行わない限り、他社の営業上の利益を侵害する「不正の目的」や「故意又は過失」が認定され、登記して会社を設立した後も、商号使用の差止めや損害賠償という営業上のリスクを抱えることになってしまいます。
そこで、当事務所では、そのような事態にならないように、法改正前と同じく、類似商号の調査をきちんと行い、無用なリスクを抱えないようにしております。
類似商号は、法務局に置いてある商号調査簿や、「インターネット登記情報提供サービス」で調べることもできます。インターネット上でも、YahooやGoogleなどの検索エンジンで類似商号を調査した方が安心と言えます。