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判例紹介-打切補償と解雇制限 専修大学事件
労働基準法に定められている打切補償が支払われた場合に労働基準法19条1項本文により解雇が制限されるかという問題に関して、高裁の結論を覆した重要判例である専修大学事件(平成25年(受)第2430号地位確認等請求反訴事件 最高裁平成27年6月8日第二小法廷判決)が出されましたので紹介します。
事案の概要
- 学校法人Yに勤務していた原告Xは、業務上の疾病により休業し、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付および休業補償給付を受けていた。
- ところが、Xの休業開始から5年経過した後、Yは、Xに打切補償(平均賃金の1200日分相当額)を支払った上でXを解雇した。
- 労働基準法は、同法の災害補償を受けている労働者に打切補償が支払われた場合には、解雇は制限されないと規定している。
- しかし、本件では、①のとおり労働者災害補償保険法上の給付を受けているにすぎないから、Xに対してなされた解雇は、労働基準法19条1項本文の解雇制限(業務上の負傷・疾病により休業する期間は解雇できない)に違反し無効であると主張し、Xは、Yに対して労働契約上の地位の確認等を求めて提訴した。
このような事実関係の下、最高裁は、解雇は無効ではないとして、Xの主張を退けました。
判決のポイントは次のとおりです。
判決のポイント
- 労働者災害補償保険法上の保険給付は、労働基準法上の災害補償に代わるものであるから、前者が行われている場合は後者も実質的に行われているといえるので、打切補償を支払えば解雇は制限されないものと取り扱ってよい。
- 打切補償の支払いによって解雇されても、傷害または疾病が治るまでの間は、労働者災害補償保険法上の療養補償給付がされることから、解雇された労働者の保護に欠けるところはない。