少子高齢化が進展する中、家族を介護する労働者や出産・育児を行う労働者の雇用継続を図るために、育児・介護休業法が改正され、介護休業と育児休業が従来よりも取りやすい制度に変わることが決まりました。
以下、改正のポイントを述べます。
介護関係では、次の5点が平成29年1月1日から改正されます。
労働者は、介護を必要とする家族を抱えている場合、同じ介護理由につき通算93日まで、介護休業を取ることができますが、現在のところ原則1回の取得に限られます。
しかし、改正後は、この介護休業を3回まで分割して取得することができ、地域包括支援センターやケアマネジャーといった介護の専門家により相談しやすい制度になります。
介護を必要とする家族を抱える労働者は、その家族を世話するために1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで介護休暇を取得することができます。
この介護休暇については、従来、1日単位で取得することとされていましたが、改正後は半日(所定労働時間の2分の1)単位で取得できるようになります。
家族を介護する労働者に対して、会社は、(ア)所定労働時間の短縮措置、(イ)フレックスタイム制度、(ウ)始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、(エ)労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準ずる制度のうち、いずれかの措置を選択して講じなければなりません。
この措置について、従来、介護休業と通算して93日の範囲で利用させれば足りましたが、改正後は、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用を可能とする必要があり、大幅に期間が拡大されます。
介護に関して、従来は所定外労働の制限はありませんでしたが、改正後は、家族を介護する必要がなくなるまで、残業の免除が受けられる制度が新たに設けられます。
契約期間の定めのある労働者については、(ア)介護休業の申出時点で過去1年以上継続して雇用されていること、(イ)介護休業を取得する日から9か月(93日+6か月)を経過する日までの間に雇用契約がなくなることが明らかでないことという要件を満たす場合は、介護休業を取得できるようになり、改正後は取得の要件が緩和されます。
なお、既に施行されている内容ですが、平成27年8月1日以降に開始された介護休業について、休業中に雇用保険制度から受けられる介護休業給付金が、従来の休業開始前の賃金の40%から67%に引き上げられています。
介護休業中は、所得が減るなど経済的に支障が生じるケースが多いことから、メリットの大きい変更点といえます。
育児関係では、次の3点が平成29年1月1日から改正されます。
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、病気、けがをした子の看護や子に予防接種、健康診断を受けさせるために1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで育児休暇を取得することができます。
この育児休暇については、従来、1日単位で取得することとされていましたが、改正後は半日(所定労働時間の2分の1)単位で取得できるようになり、仕事と育児の両立がより図りやすくなります。
契約期間の定めのある労働者については、(ア)育児休業の申出時点で過去1年以上継続して雇用されていること、(イ)子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないことという要件を満たす場合は育児休業を取得できるようになります。
従来の子が1歳になった後も雇用継続の見込みがあることという曖昧な要件が削除されたため、改正後は対象者が相当数増えることが予想されます。
従来、育児休業等が取得できる対象は、法律上の親子関係がある実子や養子に限られていましたが、改正後は、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子なども新たに含まれるようになります。
以上で述べた介護・育児休業制度等を利用したことにより、労働者が何らかの不利益を受けてしまっては、制度の実効性がなくなってしまいます。
そこで、以上の改正に加えて男女雇用機会均等法も改正され、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由に会社が労働者を不利益に取扱うことが禁止されるだけでなく、上司や同僚からの嫌がらせ(マタハラ・パタハラ等)を防止する措置を講じることが会社に義務付けられるようになりました。
また、派遣労働者の派遣先に対しても同様の義務が課せられます。
このマタハラ・パタハラ等防止措置も平成29年1月1日から同時に施行されます。