「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。
従業員等の健康増進・労働衛生等の取組みにかかる支出をコストではなく、投資として捉えることで、従業員の高い健康度を維持することが、ひいては企業の高い生産性の維持継続につながるという考えに基づいています。
生産性の向上、コスト削減、リスクマネジメントにより企業の業績向上につながり、また、企業価値やイメージの向上により、人材の定着率アップや有能な人材の採用につながる可能性が高まります。
健康経営が注目されるようになった背景には、近年、少子高齢化の進展によって、企業の生産性が低下したことがあります。
すなわち、労働力人口は、平成10年の6793万人をピークに減少の一途をたどり、平成27年には6598万人になり(総務省統計局「労働力調査」より)、今後は生産年齢人口の減少に伴いさらに減少すると推計されています。
また、従業員の高齢化により、労働力人口の平均年齢はこの40年間で7歳以上も増え、加齢により健康度は低下し、慢性的な体調不良を抱える従業員が増加したため、企業も健康面を見直し、生産性の低下に歯止めをかけるよう対策を迫られるようになったのです。
健康経営の導入は、生産性の向上に資するだけでなく、制度上も次のように様々なメリットがあります。
日本政策投資銀行をはじめ、西武信用金庫など地域金融機関は、健康経営を行う企業に融資金利の引下げを実施しています。
厚生労働省は、企業の健康経営への取組みを認定し、一般競争入札における加点評価を実施しています。
経済産業省と東京証券取引所は、健康経営に積極的に取り組む企業を「健康経営銘柄」として株式市場で評価し、魅力ある企業として投資家にアピールできる仕組みを設けました。
平成28年1月21日には、25業種25社が「健康経営銘柄2016」に選定されています。
健康経営を始めるには、東京商工会議所が発行する「健康経営ハンドブック」に沿って、次の5ステップで取り組むのがよいでしょう。
まず、自社の現状を確認し、社内外に健康経営を行うことを宣言します。
この際、全国健康保険協会が行う「健康企業宣言」に応募する形で行うと、スムーズにことが運びます。
次に、社内で健康づくりの担当者を決めます。健康づくりに関する外部人材の活用も検討に値します。
選ばれた担当者のもと、定期健診診断の受診率、残業時間、有休の取得状況、食事の時間帯など職場環境を確認し、また、従業員の心の健康状態を把握(ストレスチェック)します。
可能であれば、チェックシートを用いて点数化することにより、「健康度の見える化」を図り、自社の健康課題を把握します。
(3)で把握した自社の健康課題に基づき、社内で優先的に取り組む課題を決めます。
優先順位に従って課題解決の方法を検討し、計画を立案します。健診受診率100%、喫煙率、有休取得率、朝食欠食ゼロなど数値目標も検討します。
従業員の健康づくりの参加・実施状況を把握します。
生活習慣・健康状況の改善、参加者の満足度、仕事のモチベーションアップなど、健康づくりによる反応・効果を確認し、次の一手(改善策)を検討します。
健康経営に初めて取り組む場合、上記画像のリンクから全国健康保険協会が発行するチェックシート兼リーフレットをご参照いただくと、取り掛かりやすいでしょう。