厚生労働省は、給料に関する統計として、毎年、賃金構造基本統計調査(賃金センサス)をまとめています。
平成28年は、6月時点の初任給額について調査が行われ、初任給額の加重平均が平成28年11月17日に公表されました。
平成28年賃金センサスによると、新規学卒者の初任給(男女計)の加重平均は、表1のとおり、全ての学歴で前年を上回っています。
<表1 学歴別に見た初任給>
- |
大学院 |
大学卒 |
高専・短大卒 |
高校卒 |
---|---|---|---|---|
初任給額 |
231.4 千円 |
203.4 千円 |
176.9 千円 |
161.3 千円 |
対前年増減率 |
1.3% |
0.7% |
0.7% |
0.2% |
次に、主な産業について産業別に初任給(大学卒)を見ると、男性は⑴「建設業」(213.2千円)、⑵「情報通信業」(212.5千円)、⑶「生活関連サービス業、娯楽業」(209.6千円)が、女性は⑴「情報通信業」(210.9千円)、⑵「サービス業(他に分類されないもの)」(205.0千円)、⑶「学術研究、専門・技術サービス業」(204.1千円)がベスト3となっています。
また、ワースト3は、男性が⑴「宿泊業、飲食サービス業」(194.1千円)、⑵「医療、福祉」(196.7千円)、⑶「運輸業、郵便業」(198.1千円)、女性が⑴「運輸業、郵便業」(185.2千円)、⑵「医療、福祉」(196.8千円)、⑶「金融業、保険業」(198.0千円)の順になっています。
企業規模別に見た初任給(男女計)を表したのが表2です。
<表2 企業規模別に見た初任給>
- |
大学院 |
大学卒 |
高専・短大卒 |
高校卒 |
---|---|---|---|---|
企業規模計 |
231.4 千円 |
203.4 千円 |
176.9 千円 |
161.3 千円 |
大企業 |
234.8 千円 |
206.9 千円 |
184.5 千円 |
163.8 千円 |
中企業 |
224.9 千円 |
201.1 千円 |
176.6 千円 |
159.6 千円 |
小企業 |
219.2 千円 |
199.1 千円 |
173.1 千円 |
161.2 千円 |
傾向としては、小企業(同10〜99人)、中企業(同100〜999人)、大企業(常用労働者1,000人以上)の順で初任給(加重平均)が高くなることは、例年と変わりがありません。
上記の傾向から、一見、初任給を低く設定している企業は、学歴別、産業別に見て高水準の初任給を設定しなければ人が集まらないようにも思えます。
しかし、労働政策研究・研修機構が6月15日に公表した別の統計(「人材(人手)不足の現状等に関する調査及び働き方のあり方等に関する調査」)によると、「募集賃金を引き上げる」ことは、人手不足緩和策への取組みとして効果がないと感じている企業の方が、効果があると感じている企業より多いという結果が出ています。
そうすると、新規学卒者を採用するには、賃金センサスが示す学歴別、産業別の初任給額を考慮しながらも、賃金額だけに捉われず、例えば、「新卒採用を強化する(通年採用化、新卒定義の拡大、インターンシップの受入強化等)」ことや、「業務の効率化を進める(無駄な業務の削減、仕事の分担・進め方の見直し)」など、働きがいのある企業になることの総合的な取り組みが求められると言えそうです。